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ジムオーナーの年収はどう決まる?売上・経費・ロイヤリティから逆算する試算シート

桒谷 一成

ジムオーナーの年収はどう決まる?売上・経費・ロイヤリティから逆算する試算シート

最終確認日:2026年9月30日

「ジムオーナーの年収はいくらですか」という質問には、一つの数字では答えられません。同じブランドの同じ規模の店舗でも、会員数、月会費、家賃、人件費、ロイヤリティの方式、借入の返済額が違えば、オーナーの手元に残るお金は大きく変わるからです。

本記事では、特定ブランドの年収を断定しません。代わりに、オーナーの手取りがどんな式で決まるかを分解します。そのうえで、仮定値を使った3つのシナリオ(悲観・標準・楽観)と感度分析で、どの数字が年収を大きく動かすのかを示します。後半では、収益モデルを公開している本部の数値を出典付きで紹介し、読むときの注意点を整理します。

本記事の試算値はすべて説明用の仮定値です。実在のブランドや店舗の実績ではなく、収益を保証するものでもありません。

オーナーの手取りを決める計算式

ジム経営で、オーナーの手元に残るお金(税引前)は次の式で表せます。

オーナー手取り(月・税引前) = 会員数 × 月会費 − (家賃 + 人件費 + ロイヤリティ + 広告宣伝費 + 保守・システム・光熱費 + 決済手数料 + マシンリース料 + 借入返済)

年額にする場合は、この月額を12倍します。式の各項目は、性質で3つに分けられます。

区分

項目

動き方

確認する資料

売上

会員数 × 月会費(+パーソナル・物販など)

会員数と単価で変わる

商圏調査、本部の会員推移モデル

売上に連動する費用

売上歩合のロイヤリティ、決済手数料、一部の広告費

売上が増えると増える

加盟契約書案、決済会社の料率表

固定費

家賃、人件費、定額ロイヤリティ、保守・システム費、リース料

売上に関係なく毎月かかる

賃貸借契約案、見積書、リース契約案

返済

借入の元金・利息

返済計画で決まる

金融機関の返済予定表

ここで注意したいのは、会計上の「営業利益」と、オーナーの「手取り」は同じではないことです。

  • 減価償却費:会計上は費用ですが、現金は出ていきません。本部モデルの営業利益に減価償却費が差し引かれていれば、現金ベースの手元資金はその分だけ多くなります。
  • 借入の元金返済:会計上の費用ではありませんが、現金は毎月出ていきます。営業利益がプラスでも、返済後の手元資金はマイナスになることがあります。
  • オーナー自身の労働:オーナーが店舗に立つ場合、その時間の人件費が本部モデルに入っていないことがあります。

日本フランチャイズチェーン協会(JFA)も、本部の収益モデルを読むときは、実績に基づくものか、売上が税込か税抜か、人件費に経営者分の給与が含まれるか、減価償却費が計上されているかを確認するよう案内しています。支払利息は加盟者ごとに借入額が違うため、記載していないチェーンが多いとも説明しています(JFA:募集用パンフレットの見方)。

3シナリオの試算表(仮定値)

ここでは、24時間ジムを想定した架空の店舗で試算します。前提はすべて仮定値です。

  • 月会費:7,500円(税抜)で全会員同一と仮定
  • 家賃50万円、人件費40万円、広告宣伝費20万円、保守・システム・光熱費25万円、マシンリース料30万円(すべて月額・仮定)
  • ロイヤリティ:売上の8%(仮定)
  • 決済手数料:売上の3%(仮定)
  • 借入返済:元利合計で月40万円(仮定)

項目(月額・万円)

悲観

標準

楽観

会員数

250人

400人

550人

売上(会員数×7,500円)

187.5

300.0

412.5

家賃

50.0

50.0

50.0

人件費

40.0

40.0

40.0

ロイヤリティ(売上の8%)

15.0

24.0

33.0

広告宣伝費

20.0

20.0

20.0

保守・システム・光熱費

25.0

25.0

25.0

決済手数料(売上の3%)

5.6

9.0

12.4

マシンリース料

30.0

30.0

30.0

借入返済(元利)

40.0

40.0

40.0

支出合計

225.6

238.0

250.4

オーナー手取り(月・税引前)

−38.1

62.0

162.1

オーナー手取り(年・税引前)

−457.5

744.0

1,945.5

この仮定では、会員数が250人から550人に変わるだけで、年額の手取りがマイナス約458万円からプラス約1,946万円まで動きます。悲観シナリオでは毎月の赤字を運転資金で埋めることになるため、開業時にどれだけ運転資金を持っておくかが重要になります。

損益分岐点も式で出せます。固定費と返済の合計は205万円、売上に連動する費用は売上の11%(ロイヤリティ8%+決済手数料3%)です。

手取りがゼロになる売上 = 205万円 ÷(1 − 0.11)≒ 230.3万円

手取りがゼロになる会員数 = 230.3万円 ÷ 7,500円 ≒ 308人

この仮定の店舗では、会員が約308人を超えるまでオーナーの手取りはマイナスです。会員数の立ち上がりが遅れる場合の資金繰りは、ジムFCの資金繰りシナリオで月ごとに確認できます。

感度分析:どの数字が年収を大きく動かすか

標準シナリオ(会員400人・手取り月62.0万円)を基準に、条件を一つずつ変えたときの変化を見ます。これも仮定値による試算です。

変えた条件

月の手取り(万円)

年の手取り(万円)

基準との差(年)

基準(標準シナリオ)

62.0

744.0

―

会員数 −10%(360人)

35.3

423.6

−320.4

会員数 +10%(440人)

88.7

1,064.4

+320.4

月会費 −500円(7,000円)

44.2

530.4

−213.6

月会費 +500円(8,000円)

79.8

957.6

+213.6

家賃 +10万円

52.0

624.0

−120.0

人件費 +10万円

52.0

624.0

−120.0

ロイヤリティを売上の3%に

77.0

924.0

+180.0

ロイヤリティを売上の10%に

56.0

672.0

−72.0

ロイヤリティを定額月20万円に

66.0

792.0

+48.0

借入返済を月30万円に(期間延長など)

72.0

864.0

+120.0

この表から、次の3点がわかります。

  1. 会員数の影響が最も大きい:会員数が10%変わるだけで、手取りは約43%変わります。固定費の割合が高い業態では、売上の小さな変化が手取りの大きな変化になります。
  2. 月会費の設定も効く:500円の差でも、400人規模では年間200万円を超える差になります。値上げや値下げを検討するときは、退会率の変化とあわせて見る必要があります。
  3. ロイヤリティは方式で効き方が変わる:定額制は売上が増えるほど負担率が下がり、売上歩合制は売上が少ない時期の負担が軽くなります。同じ店舗でも、どちらが有利かは会員数の水準によって入れ替わります。

ロイヤリティの方式の違いを悲観・楽観の両シナリオで比べると、次のようになります(仮定値)。

ロイヤリティ方式

悲観(250人)の月手取り

標準(400人)の月手取り

楽観(550人)の月手取り

売上の8%

−38.1万円

62.0万円

162.1万円

定額 月20万円

−43.1万円

66.0万円

175.1万円

この仮定では、会員が少ないときは売上歩合のほうが、会員が多いときは定額のほうが手取りは多くなります。どちらが有利とは言い切れず、自分の店舗がどの会員数帯で推移しそうかで判断が変わります。ロイヤリティの算定基準や別料金の読み方は、ジムFCのロイヤリティ比較で整理しています。

本部が公開している収益モデルの例

収益モデルを公式FC募集ページで公開している本部もあります。以下は各本部が示すモデルや一例を、そのまま転記したものです。どれも収益を保証するものではなく、前提(坪数、家賃、会員数、税込・税抜)がそろっていないため、ブランド同士の優劣を比べるものでもありません。

ブランド(業態)

公式モデルの前提

月の売上

月の利益

読むときの注意

HEAT24(24時間ジム)

60坪、賃料30万円、月会費8,000円(税抜)。1年目の月平均会員216人

約222.6万円

営業利益 約22.2万円(10%)

ロイヤリティは固定で月20万円(税別)。減価償却費を含む営業利益で、借入返済は含まない

HEAT24(同上)

3年目の月平均会員485人

約509.3万円

営業利益 約232.1万円(46%)

同上。会員数は本部の想定推移

HEAT24(同上)

5年目の月平均会員633人

約664.1万円

営業利益 約358.0万円(54%)

同上

Repilates(ピラティス)

オープン半年後の会員300人、客単価1万円、初期投資3,500万円

300万円

月間店舗収益 63.2万円

ロイヤリティ30万円(売上の10%)、決済手数料、広告費、賃料50万円、人件費100万円などを差し引いた値

Repilates(同上)

オープン半年後の会員400人

400万円

月間店舗収益 139.7万円

同上。会員100人の差で収益が2倍以上になる

Beat Pilates(ピラティス)

公式の収益モデル(税込)

200万円

利益 71.2万円(36%)

人件費40万円、広告費25万円、家賃25万円、ロイヤリティ20万円などを差し引いた値

WECLE(ピラティス)

会員500名の収益モデル

600万円

利益率35%

投資回収期間は2年〜と記載。費用の内訳は公式ページに掲載なし

出典:HEAT24 FC募集ページ、Repilates FC説明LP、Beat Pilates FC募集サイト、WECLE FC募集ページ(いずれも2026年9月30日確認)。

本部モデルを自分の試算に使うときは、次の順で確認します。

  • 会員数は実績か想定か:HEAT24の会員推移は年ごとの想定値、Repilatesは「オープン半年後」の会員数モデルです。既存店の実績分布(上位・中央値・下位)を資料で確認します。
  • 何が差し引かれていないか:借入返済、オーナー自身の人件費、税金はモデルに含まれていないことが多い項目です。上の計算式に当てはめて、足りない項目を自分で差し引きます。
  • 税込か税抜か:Beat Pilatesのモデルは税込、HEAT24は税抜と明記されています。自分の試算と表記をそろえます。

自分の数字で埋める年収試算シート

最後に、自分の候補物件と候補ブランドの条件で埋める試算シートです。3つのシナリオを必ず並べて書きます。空欄は未確認の項目です。都合のよい数字で埋めず、根拠となる資料が手に入ってから記入してください。

項目(月額)

悲観

標準

楽観

根拠資料・確認先

会員数

商圏調査、既存店の実績分布

月会費(税抜)

本部の料金表、競合の料金

その他売上(パーソナル・物販等)

本部の実績資料

売上合計

家賃

賃貸借契約案

人件費(オーナー分を含むか明記)

シフト表、求人相場

ロイヤリティ(方式と計算式)

加盟契約書案

広告宣伝費

本部の販促計画

保守・システム・光熱費

見積書、本部資料

決済手数料

決済会社の料率表

マシンリース料

リース見積書

借入返済(元利)

金融機関の返済予定表

オーナー手取り(月・税引前)

オーナー手取り(年・税引前)

手取りがゼロになる会員数

記入のポイントは次のとおりです。

  • 借入返済は返済予定表の額を使う:日本政策金融公庫の新規開業資金では、返済期間が設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間を含む)と案内されています(日本政策金融公庫:新規開業・スタートアップ支援資金)。実際の期間や金利は審査や条件で決まるため、金融機関の返済予定表で確認してください。
  • 税金は別に見る:個人事業か法人か、役員報酬をどう設定するかで、税引後の手取りは変わります。税務の扱いは税理士に確認します。
  • 会員数は段階で置く:開業直後から標準シナリオの会員数になるとは限りません。月ごとの会員推移を置いて、手取りがプラスに転じる月を確認します。

会員数・月会費・固定費を入れて月次収支を確認するには、収支シミュレーターが使えます。開業資金の組み立て方はジム開業に必要な資金も参考にしてください。

まとめ

  • ジムオーナーの手取りは「会員数×月会費 −(家賃・人件費・ロイヤリティ・広告・保守・リース・借入返済)」で決まります。一つの年収額で語れるものではありません。
  • 仮定値の試算では、会員数が250人から550人に変わるだけで、年間の手取りはマイナス約458万円からプラス約1,946万円まで動きました。
  • 感度分析では、会員数10%の変化で手取りが約43%変わりました。会員数と月会費の見通しを最も慎重に確認する必要があります。
  • ロイヤリティは、定額制か売上歩合制かで、会員数が多いときと少ないときの有利・不利が入れ替わります。
  • 本部の収益モデルは参考になりますが、借入返済、オーナー自身の人件費、税金が含まれていないことが多いため、自分の試算シートで差し引いて確認してください。

候補ブランドの収益モデルの読み方や、条件に合う本部の比較について相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。

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